真逆のベクトル

はい。新入荷UPしました。
そういえば黎達達榮の作品をUPするのは
ほぼ初めてではないでしょうか。
利志達らとも並び称される
香港インディーズコミックシーンの牽引役で、
かなりマニアック&不条理な内容ではありますが、
日本の浅野いにお作品などを愛読されているお客様には
必ずや感応する部分があるのではないかと思われます。
どうぞお楽しみ下さいませ。


さて先日「文化庁メディア芸術祭」の各賞発表がありまして、
マンガ部門はフランスの
ブノワ・ペーターズ/フランソワ・スクイデン著「闇の国々」が大賞に選ばれたそうです。
邦訳も出ていますし、
先日当店も参加した「海外マンガフェスタ」でも作者両氏のサイン会があったようです。
自ブースにはりついていた店主は残念ながら見ることが出来ませんでしたが…。
それにしても驚いたことに受賞の報は
朝のワイドショーでまで取りあげられており、
「メディア芸術祭ってすごいんだな」と思う次第です。
ところでこの作品はいわゆる「バンド・デシネ」(BD)、
フランス・ベルギーを中心に発達を遂げているコミックの一形式で著されています。
店主はあまり触れたことがなかったのですが、
昨年度メディア芸術祭の記念展覧会を六本木・新美術館で観覧し
そこでの展示をきっかけに、
青山ブックセンターでBDのご本を見つけるとパラパラめくったりするようになりました。
展覧会でまず思ったのは
「なんとまあ、香港コミックとは真反対の表現方法なことよ!」。
コマの割りかた、アングルの取りかた、
ストーリーの組み立てかた、吹き出しの饒舌さと寡黙さ、
なにからなにまで香港の手法とは対極をなしています。
あまりの違いに、ただただ店主は驚くばかりでした。
同じ「マンガ」と呼ばれる表現方法−
紙をコマで割って、登場人物と背景を描いて、吹き出しでしゃべらせて、お話を進めて−というものなのに
ここまで真逆のベクトルで、それぞれ進化をとげられるものなのか!
本当におもしろいものです。
で、どちらがより芸術性が高いのか。娯楽性が高いのか。
それはわかりません。
BDと香港漫画、ジャンルでくくってどちらが上等かと決めることなど
誰もできないのでございます。
あえていえば300年か400年ほどあとに
われらが子孫が決めてくれることでしょう。
浮世絵だって当時は海を渡るカワラケの緩衝材扱いだったのです。
ただ日本で、BDも香港漫画も、もちろん日本の漫画も他国の漫画も
なんでも選べて、どれにしようか迷っちゃう!
そんな「迷う楽しさ」を読者の皆様にご提供すべく
香港漫画店も頑張ってまいる所存でございます。
それにしてもメディア芸術祭マンガ部門、
香港勢を始めアジアからももっと応募すればいいのに…という気はいたします。