1987!嵐の季節!

はい。新入荷UPしました。
当店入荷本の最古記録更新でございます、
1987〜88年刊行の「酔拳」単行本です。
復刻版・合訂本などではなく、当時に発行された薄装本そのままで、
しかも比較的状態が良く、まさに奇跡の入荷でございます。
これまでは「天下画集」初期分(1990年)、司徒劍僑「殺剣」(1989年)あたりが
最古の作品となっておりましたが、軽々と記録更新でございます。
現在の黄玉郎コミックとは筆致も、キャラクターの頭身もずいぶん異なり、
レトロさあふれる紙面が極めて興味深いものとなっております。
酔拳」といえばジャッキー・チェンの映画「ドランクモンキー 酔拳」を
思い浮かべる方が多いかもしれませんが、
これとは直接の関係はございません。
さらに今回UP分には「酔えば酔うほど強くなる」あの拳法のシーンも
とくにないのでございますが、
ではどんな内容か?と申しますと
実は「龍虎門」の3代前にあたる先祖・師匠筋が活躍する
プレ・ストーリーなのでございます。
龍虎門は60年代末の香港が舞台、そしてこちら「酔拳」は
1930年代のお話でございますが、
「龍虎門」と「酔拳」、さらに関連作品である「天下無敵小劍仙」「天下無敵剣邪神」などは
登場人物が血縁や師弟関係でつながっておりまして
当店も一度、相関図を作ったことがございます。
いまはちょっと紛失してしまいましたが、また見つかったらUPさせていただきます。
ところでこの1987〜88年といえば、
馬榮成がまだ「天下出版」設立前で玉郎機構から「中華英雄」を出していたころ。
さらに劉定堅も「自由人出版」設立前でまだ玉郎機構にいたころ。
もちろん「街頭覇王」の許景シンや邱福龍もこのころから黄玉郎のもとにいました。
つまり今をときめく主要漫画家さんたちはこの頃みーんな
黄玉郎のふところ、この「酔拳」の版元にいたのです。
ひらたくいえば漫画産業をほぼ独占していたわけですね。
しかし今回UP分の刊行、1987年秋〜冬といえば
現代史の教科書を開けばおわかりの通り「ブラックマンデー」到来のとき。
漫画の巻末コラムでも少し触れられています。
しかし「少し触れる」どころの騒ぎじゃなく、
株価大暴落は黄玉郎、そして会社「玉郎機構」に金銭的な大打撃を与え、
いけないことに手を染め、黄玉郎はお手々が後ろに回り、
玉郎機構は「文化傳信」に変わり、「玉皇朝」発足のきっかけもでき、
次々独立した漫画家によって「自由人」や「天下出版」などのちの風雲児が生まれ、
つまり香港の漫画界を一変させる大嵐となりました。
そんな嵐が裏で吹き荒れながら刊行されていた漫画本かと思うと
また見方も変わってまいります。
貴重な入荷です。どうぞお楽しみ下さいませ!