陳浩南は毎週、海を渡っていた

はい。新入荷UPしました。
「競雄女侠 秋瑾」は現地の伝記アクション映画をコミック化したもので、
昨年現地公開のこの映画、監督さんが邱禮濤(ハーマン・ ヤウ)、
主演が黄奕(ホアン・イー)嬢で杜宇航くんも出てるそうで、
ピンと来た方もいらっしゃるかも知れません。
そうです。本日日本公開「葉問前傳(イップ・マン 誕生)」と
ほぼ同じメンバーで作られているわけですね。
はじめから2本まとめて企画されたのではないか?という説もありますが、
お話どうしには関連はなく、秋瑾は辛亥革命のころの女闘士です。
武術の達人だったというのは事実だそうです。
1色刷りで、冷徹なペンタッチの絵柄がまた
女闘士の強さや聡明さをよく表していますよ。
それから邱瑞新、15年前の隠れた名作「烏鴉」です。
当時邱瑞新は「古惑仔」の制作陣の一員で、
「古惑仔」を出しながらこちらも手がけたようですが
黒社会ものとは一線を画す、怪奇アクションとなっております。


さてこの本の巻末に
「古惑仔」や「烏鴉」をはじめ、同版元の薄装本すべてを対象に
海外への定期購読サービス開始、という告知を見つけました。
ちょっと驚きました。
現地・香港では週刊誌と同じ扱いで、読み捨てにする人も多い薄装本漫画。
わざわざ毎週、遠く北米やヨーロッパ地域にまでエアメールサービスをしていたとは。
が、この作品の発行が1997年であるということで
「ああ、なるほど」と思いました。
1997年は、香港の中国返還の年です。
イギリスから中国に支配権が移ったら
自由や富が失われるのではないか?と心配した香港人が、
返還を前に、次々に海外に移住していきました。
毎週「古惑仔」を楽しみにしていた読者でも
家族について行かざるを得ず、また先への不安には勝てず、
後ろ髪引かれながら香港をあとにしたのでしょうね。
そんな読者さんのせつない心情が垣間見える「海外発送サービス」であります。
いまはそのようなサービスはあまり必要なさそうです。
返還後の香港がまあ、皆様ご承知の通り
そう心配するほどのこともなかったので
戻ってきた人も多く、
いま海外に出ている香港人は、お仕事やお勉強など
なにか目的のある人ばかりです。
漫画より、お仕事やお勉強の参考書を読むのに忙しいことでしょう。
またシンガポールや北米など、定住者が増えて
華人の大きなコミュニティが出来上がった場所向けには、
漫画出版社はちゃんと現地版を発行するようになりました。
皇朝出版に行くと、タイ版「神兵玄奇」や
司徒劍僑の北米限定作品が飾ってあったりします。
返還から15年。
大陸とまた新しい関係や、いろいろな問題も生まれているようですが、
香港人と世界との、思わぬ関係性の創出を促したのもまた
「返還」という出来事だったのかも知れませんね。