香港漫画家の年収

はい。新入荷UPしました。
現在は東立香港で目のさめるような意欲的な作品を描き続ける孫威軍、
10年前に文化傳信で著した仏教ロマンコミック「観世音」です。
香港の著名寺院の和尚さんによる推薦文がオビを飾る当作品、
道ひとすじに生きる人の清々しさと、それゆえの苦しみを
繊細に描いた傑作です。感動します。
どうぞお楽しみ下さいませ!


さて、いきなり世俗的な話になって恐縮ですが、
香港の漫画家さんは、いったいいくら稼いでいるのでしょうか?
とある薄装本の巻末コラムで
香港漫画界のゴッドファーザー・黄玉郎が
「漫画家の年収」を明かしていたので、ご紹介しましょう。

単位はもちろん香港ドルですね。
このコラムが書かれた1998年5月当時、
1HK$は約17.3円。(店主の昔の日記メモによる)
「特級」が300〜600万HK$、
ぺーぺーの「三線級」が数万〜20万HK$ですって。
つまり、いちばん稼ぐ人で年収1億円以上、
サンシタ級で年収100万円以下〜350万円弱、ということですね。
「意外と稼ぐなあ!」と思われた方が多いのではないでしょうか。
もちろん日本には、億単位で稼ぐ人気漫画家さんも何人もいらっしゃいますが、
いっぽうで300万以上の安定した年収を稼ぐのは
とっても大変なんじゃないでしょうか?現状。
もっとも、1998年頃は香港漫画界がいちばん景気よかった時代。
今はずっと厳しいはずですし、
また、香港は小さな場所。漫画家さんの数も限られていて、
上の記事にも「1線・2線級が合計で40〜50人ぐらい」と書かれています。
で、おそらく「特級」の上限・600万HK$というのが
黄玉郎氏自身の年収ではないかと思われます(誰でも想像つきますね…)。
ただ、これは決して「漫画だけ描いて1億円」ということではありません。
香港ではメジャーな漫画家さんになりますと
みんな独立して自分の会社をつくり、「実業家」としての顔をもちはじめます。
そういった事業収入、役員報酬みたいなものコミでのインカムかと思われます。
そう思うと決して高くはありませんね。
また、香港特有の考え方として「お金はあくまでお金」、
才能や文化・芸術創作物の対価としての意識は希薄で、
お金を稼ぐこと自体が
技術と運を必要とする、ひとつの営為なんですよね。
だからヒット漫画を一本描いて数千万単位の年収を得ても
それを株式や不動産につぎ込んで全部すってしまうこともあるし、
全部すってもその人自体がダメになってしまったということでは全然なくて、
また別の商売を始めて再起することもあります。
お金があるのもないのも、
長い人生のうちの、ちょっとした風向きの違い。
きっとそういうことなのでしょうね。