台湾のこと

はい。新入荷UPしました。
ひさびさの司徒劍僑「臥虎蔵龍」、
それからデジモンの香港オリジナルコミック「数碼暴龍」シリーズです。
「数碼暴龍」は店頭に出すのは初めてだったんですね。
リクエストベースで数回仕入れたことはあったのですが…。
香港でも大いに盛り上がり、
正文社のキッズ雑誌「CO-CO!」でも「MOZ召喚王」とならぶ
2000年代前半のキラーコンテンツだったようです。
香港漫画特有の劇画調とは一線を画す
スマートな絵柄もなかなか魅力的でございます。
どうぞお楽しみ下さいませ。


さて、このところ台北立法院学生占拠の話題でもちきりですね。
店主も非常に関心をもって、ニュースや日本での反応を毎日追っています。
ツイッターでも関連のつぶやきが多数流れてまいります。
しかし当店の(役に立たないつぶやきばかりの)ツイッターアカウントからは
占拠当初に数言申し上げたきり、この件に言及致しておりません。
学生さんたちの行動に対し、支持も反対も致しておりません。
「両岸サービス貿易協定」でしょうか。これが通れば
肥え太った大陸の産業やマネーが一気に台湾になだれ込み、
地元の中小企業がすべてやられ、画一的なチェーン企業ばかりの街並みになってしまうのは
いまの香港、金行と時計屋ばかりが林立し下品になったネイザンロードを見れば
火を見るよりも明らかです。
地元台湾で嫌がる人がいるというのは容易に想像がつきます。
それなら中小企業の経営者や従業員をふくめた広汎な市民運動になってもよさそうなのに、
なにゆえ学生さんのみが運動に走っているのでしょう?
いくらニュースや解説を読んでも、そこのところの理由がわからず、
「わからないものをむやみに支持も反対もできない」の結論に至りました。
よくわからないままに荒れるよその国の片方に肩入れしたらどうなるかは、
「ネットの国際世論を味方につけた」「フェイスブック革命」などともてはやされた
アラブの春」の国々が、その後よりたくさんの血を流したことで明らかだと
店主は思っておるのでございます。
その後流れるかもしれない血にたやすく責任は持てないのでございます。
これが香港なら自分の血を以て贖っても結構ですので
思うところに沿う運動なら全力で支援致しますが、
それ以外の国のことは、わかりません。
今回、台湾の一連の経緯を追う中で
「台湾を香港のようにしてはいけない」という主張を見かけました。
それに対する日本人の「支援者」さんの反応は、
「香港は返還で中国化したからな」「1997年に中国にのみ込まれたんだもんな」程度のものでした。
たいそう国際情勢にご興味をお持ちのみなさまが、香港に対してはその程度の現状認識なのでございます。
返還後15年かけて、ふんだんな金銭をうしろだてにじわじわと
地元の地元らしさを殺し、テナント料の暴騰で伝統的な工芸品の店を潰し、
「カネさえ出せばいいんだろう」という大陸旅行客の無節操な買い物で品不足を誘発し、
バブルマネー流入で過剰なインフレを引き起こし、
それに耐えうる大陸富裕層向けの産業のみで街が埋め尽くされ、
低所得層の生活が完全に置き去りにされてしまったことも
どうやらご存じないようですし、
市民が北京政府圧力に反対して10万人、30万人といったデモや集会をおこなっていることも、
最近は反北京政府系マスコミのトップをターゲットに「謎の襲撃事件」が頻発していることも
ご存じないようでございます。
国民教育反対の10万人集会のさいに店主はもっと騒げばよかったのでしょうか。
拡散希望!!」「香港人を助けて!!」などと。センセーショナルに。
あるいはあの集会に立法院乱入、暴動といったオプションがつけばよかったのでしょうか。
そんなことはないはずです。
「あばれる人」より「あばれない人」のほうが
我慢強くてずっと立派であると、子供の頃から教わってまいりましたよね。
しかし、あばれなければ海外の耳目を集めることもなく、
「暑い」「寒い」「桜が咲いた」という重大ニュースを伝えるのに忙しい日本の報道各位も注目しないのであります。
あばれることは、もっと強い暴力の応酬を呼びます。
場合によっては「世界の番長」を自認するあの乱暴な大国が
介入してくるかもしれません。
そんなふうになって香港の街が荒廃し、漫画の本が燃えてなくなり、
仲良くしたり意地悪したりしてくれた香港人のみなさんが怪我したりするのが
店主は忍びないのでございます。


「香港はすでに中国の一部なのだから、きみも中国の味方だろう?」と
ときどきそのようにおっしゃる方がおられます。
店主が誰よりも北京のあの横暴な政府を気に入っていないのは、
当ブログでも繰り返し繰り返し申しているところでございます。
かといって「敵の敵は味方」式に
嫌中ゆえに台湾の今回の挙を応援するといった皆様に
香港も応援してね!とは絶対に申し上げないのでございます。
憎しみは暴力の応酬しか呼ばないとは
先日見に行ったタイバニ映画でも虎徹さんやバーナビーさんが曰っておりました。
(やっと見に行けました)
あるお国を嫌うことで溜飲を下げたい皆様はきっと、
毎日の暮らしで、何かを罵らなければすかっとしないような不如意があるのでございましょう。
店主にももちろん、きりきりと怒りのこみ上げる不如意が日々ございます。
が、しかし、「中国憎し」の方が
中国支配に反発する台湾学生を応援したからといって、
それで明日から上司がいじめてこなくなるわけでも
お給金が上がるわけでも、定時で帰してもらえるわけでも、
お友達がLINEの既読無視をしなくなるわけでもないのでございます。
「すかっとする」のは斯様に難しいことであり、
どこかの国を嫌うことで安易にかなう気は致さぬのでございます。
それでも何か思うところがあって、国を好いたり嫌ったりなさるのなら、
それはもう、店主はそういう皆様との喧嘩は望まぬところでございます。
なぜなら店主は「北京政府がにくい」と言うより
「香港漫画がおもしろい!」と言う方に忙しいからでございます。