義賣

はい。たいへんお待たせしました。
新入荷UPしました。
「刀・劍・笑」、超初期分でございます。
1980年代末、馮志明と劉定堅が「自由人出版」設立直後に開始し大ヒット、
2000年代初頭までロングランで続いたオリジナル武侠作品でございます。
実はずっと、このような「2000年以前の刀・劍・笑を仕入れたい」と願いつつ
なかなか入手できずにおりました。
というのも、今まで在庫していた3冊は版元移動後のものなのです。
ちょっと「本来の刀・劍・笑ではないな」という思いを抱いておりました。
簡単至極に申しますと、版元変更は
脚本の劉定堅と作画の馮志明が分裂したのが原因でございます。
移動後は馮志明ひとりの名義になりました。
(詳しい経緯は拙著「深く美しき香港漫画の世界」をごらん下さい。
ああまた宣伝になってしまいました。すみません。
どこの国の漫画界にもこういう沙汰はあるなあ。というのが率直な感想です。)
しかしやはり劉定堅と馮志明ががっちりタッグを組んでいた初期分が
抜群におもしろいのでございます。
というわけで、お楽しみ下さいませ。


さて、今回UP分の「刀・劍・笑」、何巻かの表紙に
「義賣」という表示があるのにお気づきでしょうか。
「チャリティ販売」という意味でございます。
スターが慈善活動のために私物やオリジナルグッズを販売することがありますね。
そのとき、この言葉がよく新聞や雑誌におどります。
なんのチャリティだったかと申しますと、
「風雲」「中華英雄」の作者・馬榮成が襲撃されケガを負う事件があり、
逃亡した犯人を検挙するための懸賞金集めだったのです。
信じられないチャリティもあるもんだ!
っていうか馬榮成への見舞金じゃないんだ!懸賞金なんだ!!と
店主かなり驚いてしまいましたが、
くわしい事の次第も今回UP分の一連の巻に文末コラムとして書かれております。
馬榮成が襲われたのは1989年元旦の白昼だったそうです。
アシスタントさんとともに利き手を斬られ、
馬氏は軽傷でしたが、アシさんは神経を切る重傷だったそうです。
チャリティ売上と漫画界全体からの寄付金で
結局46000HK$を集め(当時のレート換算で約100万円相当)、懸賞金に充てたそうです。
馬榮成は設立したての「天下出版」の人。自由人出版は同業とはいえ他社。
どうして自由人出版が他人のためにそこまでいきり立つ?と
不思議に思われる方もおられるでしょうが、
実は自由人設立スタッフと馬榮成は
同じ某大手漫画出版制作会社を退社独立した、境遇の同じ者どうしだったのです。
「見舞金」ではなく「検挙の懸賞金」を集めたのも、
馬氏への同情以上の思いが自由人スタッフに湧いたからかと思われます。
これ以上は怖くて書けません…。お察し下さい。
繰り返しますが漫画のほうは確かな画力とストーリー力で
おもしろいものとなっております。お楽しみ下さいませ。